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研究報告
「植物性たん白の
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3.蛋白質の栄養

食品蛋白質の第一義的な栄養は、対象となる動物のアミノ酸必要量に基づき、蛋白質の必須アミノ酸組成と消化吸収率によって決まります。

(1)アミノ酸組成による栄養価の評価
食事蛋白質の栄養価は、対象となる動物が必要とするアミノ酸をいかに効率よく供給し得るかによって決まりますが、それを大きく支配するのは 食品蛋白質に含まれる各必須アミノ酸含量 (6)です。
ヒトのアミノ酸要求量については十数年来検討されてきましたが、FAO/WHOが必須アミノ酸の比較パターンについて提案しています。 1957年に最初のアミノ酸評価パターンが提案され (7)、その後 1965年には幾らか修正が加えられました (8)。その後 1973年に大幅に改正され (9) 、現在のパターンはさらに新たに得られた学問的資料、新しい考え方や経験的事実などを参考にして1985年FAO/WHO/UNUにより提案されたものです。

このパターンは 1990年FAO/WHOに追認され(10) 、食品の品質評価のための比較蛋白質(必須アミノ酸評点パターン)として、当面2才以上の幼児のパターンを使用することが推奨されています。さらにこの報告で、アミノ酸価による栄養評価においても、消化吸収率を加味すべきことが強く推奨されています。これは PDCAAS(蛋白質消化吸収率−修正アミノ酸スコア)と称します(11) (表1)。

表-1 アミノ酸評点パターン
アミノ酸 (略号) 蛋白質当たりの必須アミノ酸(mg/g 蛋白質) 窒素当たりの必須
アミノ酸(mg/gN)
算定用評点パターン
1973年(FAO/WHO) 1985年(FAO/WHO/UNU) 1973年 1985年
幼児 学齢期
10〜12歳
成人 一般用 乳児 学齢期前
2〜5歳
学齢期
10〜12歳
成人 一般用 学齢期
2〜5歳
ヒスチジン(His) 14 - - - 26 19 19 16 - 120
イソロイシン(Ile) 35 37 18 40 46 28 28 13 250 180
ロイシン(Leu) 80 56 25 70 93 66 44 19 440 410
リジン(Lys) 52 75 22 55 66 58 44 16 340 360
メチオニン(Met) 29 34 24 35 42 25 22 17 220 160
シスチン(Cys)
フェニルアラニン(Phe) 63 34 25 60 72 63 22 19 380 390
チロシン(Tyr)
スレオニン(Thr) 44 44 13 40 43 34 28 9 250 210
トリプトファン(Trp) 8.5 4.6 6.5 10 17 11 9 5 60 70
パリン(Vat) 47 41 18 50 55 35 25 13 310 220
合計  
ヒスチジン込み 373 - - - 460 339 241 127 - 2,120
ヒスチジン除く 359 326 152 360 434 320 222 111 2,250 2,000


(2)ヒトまたは動物の試験による栄養価の評価(生物価、消化吸収率)
従来から、一般に動物による蛋白質の栄養価はラットの飼育試験からその成長を指標として評価されてきました。簡便な生物学的測定法として 蛋白質効率(PER)が知られています(12)。 これは摂取蛋白質当たりの体重増加量を指標としたものです。

近年、ラットの必須アミノ酸要求量はヒトのそれとは異なり(特にメチオニン等の含硫アミノ酸)、ラットでの評価をそのままヒトのモデルとして用いることにはいくつかの注意を要することが判りました。

例えば、1973年FAO/WHOから提案されたアミノ酸パターンによると大豆蛋白質はメチオニンが不足し制限アミノ酸とされていましたが、 井上ら (13)は、ヒトで大豆蛋白質に対するメチオニン補足試験を行い、窒素出納を指標として、大豆蛋白質はメチオニンの補足を必要とせず、良質蛋白質供給源であることを明らかにしました。同様の知見が米国でも Young ら (14)によって確認されています。

ヒトの日常の蛋白質源は、乳児を除き、通常は単一の食品に頼ることはありません。複数の食品が組み合わされて摂られており、このことは、日々の摂取蛋白質供給源であり、そのいくつかの組み合わせが検討されています。


(3)植物性たん白のアミノ酸組成
細胞壁が強固な野菜や海草あるいは微生物を除き、通常食品から得られる摂取蛋白質の利用率は消化吸収性を加味して85%程度と評価します。そのため、蛋白質の栄養価は必須アミノ酸組成によって決まるといっても過言ではありません。
植物性たん白はその原料である大豆や小麦粉から加工される工程で加熱時の処理が施されますが、比較的不安定とされるリジン、アルギニン、トリプトファン、含硫アミノ酸も減少しないことが報告されています。

表-2 植物性たん白のアミノ酸組成表
 IleLeuLysMetCysPheTyrThrTrpValHisArgAlaAspGluGlyProSer

粉末状
大豆
たん白

mg/g
nitrogen
3004903807882330230220833001704802507201200250340310
mg/g
protein
48
78 61 12135337351348277740115192405450
粉末状
小麦
たん白
mg/g
nitrogen
240430110100130320200160622601402201602202300210900280
mg/g
protein
41751918225734281145243829384003716049
上段:全窒素1g当たりのアミノ酸組成 mg/g Nitrogen
(改訂日本食品アミノ酸組成表 科学技術庁資源調査会・資源調査所編より引用)
下段:蛋白質1g当たりのアミノ酸組成 mg/g Protein
(全窒素1g当たりのアミノ酸組成(上記)より窒素-蛋白質換算係数を乗じて求めた)
大豆:6.25 小麦:5.70


※ 植物性たん白の窒素−蛋白質換算係数は、大豆系が6.25、小麦系が5.70を用いています。
大豆系の換算係数は、日本食品標準成分表では大豆、大豆製品については5.71が採用されていますが、日本農林規格(JAS・農林水産省)では植物性たん白食品(大豆)、その加工品、及び豆乳に関しては6.25が採用されています。
また、栄養改善法が改正され、栄養表示に関する新しい基準が平成8年より施行されましたが、大豆系の「植物性たん白、調味植物性たん白、豆乳」は6.25を用い、栄養表示することが厚生省より答申されています。


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1.日本人の栄養摂取の現状
各国との比較でみた日本人の栄養摂取

2.蛋白質所要量
蛋白質所要量についての説明。

3.蛋白質の栄養
(1)アミノ酸組成による栄養価の評価
(2)ヒトまたは動物の試験による栄養価の評価(生物価、消化吸収率)
(3)植物性蛋白のアミノ酸組成
・・・文献


文献

1)国民栄養の現状、厚生省保健医療局健康増進栄養課 監修
2)食糧需給表
3)FAO "Food Balance Sheets 1986-88 Average"
4)OECD "Food Consumption Statistics 1973-1982"
5)第五次改定 日本人の栄養所要量、厚生省保健医療局健康増進栄養課
6)Joint FAO/WHO/UNU Expert Consultation, : Energy and Protein Requirement (WHO Technical Report No.724) p121(1985)
7)FAO Expert Consultation: Protein Requirements (FAO Nutr. Studies No.16),(1957), Food and Agricultual Organization (Rome, Italy).
8)Joint FAO/WHO Expert Consultation: Protein Requirements (FAO Nutr. Rep. Ser.No.37),(1965), Food and Agricultual Organization (Rome, Italy).
9)Joint FAO/WHO Expert Consultation: Energy and Protein Requirements (WHO) Technical Report No.522), (1973), World Health Organization (Geneva)
10)科学技術庁資源調査会編「改訂日本食品アミノ酸組成表」(1986)、科学技術庁資源調査所
11)Henley,E.C. and Kuster,J.M.: Protein Quality evaluation by protein digestibility-corrected amino acid scoring.: Food Technology, 48, 74-79, 1994.
12) Official Methods of Analysis 15ed, (Helrech, K. ed) 1095-1096 (1990)
13) 井上五郎:人における分離大豆蛋白質の栄養価:「大豆蛋白質の栄養」p31-46(1987)、大豆蛋白質栄養研究会(大阪)
14) Young,V.R., Puig.M., Queiroz,E., Scrimshow,N.S. and Rand,W.M.: Evaluation of the protein quality of an isolated soy protein in young men: relative nitrogen requirements and effect of methionine supplementation.: Am.J.Clin. Nutr., 39, 16-24, 1984

 
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